JDLA G検定の勉強法その2

2019.06.21 KEN'S REPORT

6月4日から7日まで新潟市の朱鷺メッセコンベンションセンターで第33回人工知能学会全国大会が開催されました。人工知能学会は会員数が増えている数少ない学会の一つで、2012年頃の約2500人から倍増しており、それに合わせて全国大会の参加者も増えています。今年は5月中旬には参加申し込みを締切る人気になっていて、企業展示も増えています。学会の企業展示というと、各企業の製品を学会参加者に宣伝するのが普通ですが、人工知能学会の企業展示の特徴は、製品の宣伝より、AI人材採用のためのブースが目立つことです。自社の研究開発環境がいかに優れているか、どんな先進的な成果を出しているか、人工知能学会のどのセッションで成果を発表するか、などをアピールしています。海外のAIカンファレンスでは企業展示は専ら人材獲得のために行われていて、中にはCEOが自ら乗り込んでトップリサーチャーの一本釣りをするために札束が飛び交う、などと噂されていますが、人工知能学会もだんだんそうなっているのかもしれません。GDEPは3年前の北九州で行われた全国大会からスポンサーをしていて、2年前の名古屋、去年の鹿児島と4回連続でエヌビディア製品などを展示しました。

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今回私は初日、2日目に参加し、基調講演や招待講演、またロボット関連のセッションなどに参加しました。今回特に素晴らしかったのは2日目のPFNフェローの丸山宏さんの招待講演「『人工知能』をどのように読み解くか」で、これを聞くだけでも新潟に来た価値があったと思います。特に最後の「科学・工学への展開」が興味深く感じました。これまで科学では「なるべく少ないパラメータで多くの現象を説明できる」ことが尊ばれてきていて、例えばニュートンの万有引力の法則
law of universal gravityのように、互いの質量と距離、定数だけで表され、この法則がリンゴの落下から惑星の運動など様々な場面に適用出来ることから、神様が作った自然はシンプルで美しい、といわれてきたわけです。しかしながら実際の自然には多くのパラメータがあり、シンプルにしたのは人間が理解出来るのがここまでだったからではないか、と丸山さんは問題提起されました。深層学習を使えば多くのパラメータから法則を導くことが出来、人間の認知限界に拘束されない新しい自然科学、高次元科学が出来るのでは、と提案されました。また工学への展開については、「工学とは『技術と社会の契約』」であり、たとえ深層学習がブラックボックスの技術であっても、経験を積むことで社会を納得させる知見を得る必要があり、例として土木工学を挙げ、橋梁や高層ビルの建築では理論計算で強度を求めた上に、これまでの土木工学の経験から得られた安全係数を掛けて設計することで、未知の現象へ対処しており、社会もそれを許容し、安心して橋を渡っています。確かに様々な工学や物作りの現場ではなんだか分からないけれど経験的にこうした方がいい、というブラックボックスは多数あり、それによって実際に安全が守られていることから社会もそれを許容している、ということがあります。まだまだ「深層学習=ブラックボックス」だから拒否、という人は多いですが、これは実績を積んで説得していく、ということでしょう。松尾先生が以前言われていたように自動運転車が出来ても事故はゼロにはならないので、自動運転車が事故を起こすと「そら見たことか」と騒ぐ人が必ず出てくると思いますが、自動運転車の事故率は、高齢者や若者よりは低く出来るはずなので、それを社会に許容させる、という仕事が求められると思います。このような正しい技術の理解とその社会への説明というのもJDLAのG検定の合格者には求められることだろうと思います。

講演資料はスクリプト付きで、Q&Aもここに公開されているので、是非ご覧ください。

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さて前回のレポートで日本ディープラーニング協会が実施しているG検定の勉強法について書きましたが、本を買って勉強しようとしていたのに、本だけだはダメなのか、とがっかりした、という話しを何人かから聞きました。もちろん本を読んで勉強するのはいい方法ですが、勉強し易い現代社会において「読書百遍意自ずから通ず」という勉強法よりは、実際にJupyter notebookやGithubを使ってみたり、「もくもく会」に参加してみたりするのが、この分野の勉強法として優れていると私は思います。

G検定の試験は自宅のPCで受けるので、参考書を見ながら受験することも可能ですが、実際には2時間で200問以上に回答しないといけないので、即答出来なければなりませんし、いちいち調べてはいられません。なので、本を読むだけはなく、様々な勉強法で「体を動かして」知識を身に着ける必要があります。その方が将来の役に立つ資格になるはずです。

古来試験というのは、学問的な真理を追求したり、自説を述べるものではなく、出題者が知っておくべきだと思うことを覚え、出題者が正解だと思うものを素早く見つけるトレーニングで、これは科挙でも大学入試でも、資格試験でも、中学・高校の期末試験でも同じです。学問的真理の追究や自説の主張は学会で行うべきで(人工知能学会全国大会は査読のない学会なので、トンデモ自説を述べる人もいます)、深層学習のような発展途上の分野では自分の考えとは違うものもあるかもしれませんが、試験ではあくまで出題者が正解だと思っている選択肢を素早く選んでやる必要があります。

こういう観点でG検定を考えるとまず出題者が誰か、を知る必要があります。出題者は主に「深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト」の著者たちで、ほとんどは大学の先生です。なので、人工知能の定義だったり、歴史だったり、技術の進歩の過程などが重視されます。人工知能という言葉を1956年にダートマス会議でジョン・マッカーシーが初めて使った、など、AIビジネスをするのに何の関係もないと思いますが、大学の先生はこういう学問的歴史を重視します。私が学生の頃、TRONで有名な坂村先生の授業を受けましたが、坂村先生は「コンピューターサイエンスを学ぶものは必ずコンピューターの歴史を学ばなければならない」と何度も言ってました。どのように技術が進歩したから、現在この技術が使われていて、そして次はこうなる、ということが分かるようになる、という訳です(もちろん坂村先生の論理は、コンピューターの歴史を学べば次はTRONだ、ということでしたが)。「深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト」の第1章「人工知能とは」、第2章「人工知能をめぐる動向」、第3章「人工知能分野の問題」はまさにこうした人工知能の学問分野や学問的発展の経緯について書かれたところなので、ここはしっかり教養として身につけましょう。

 出題者の多くは大学の先生をしながらスタートアップ企業を経営している人たちでもあるので、「深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト」の第8章「ディープラーニングの応用に向けて(1)産業への応用」、第9章「ディープラーニングの応用に向けて(2)法律・倫理・現行の議論」も重要です。テキストに書かれた事例の他、松尾先生が出演しているNHKの「人間ってナンだ?超AI入門」シーズン3では事例を中心に紹介しているのでチェックするのをお勧めします(NHKオンデマンドで全話見られます。倍速で見れば一話15分です)。

 残り第4章「機械学習の具体的手法」、第5章「ディープラーニングの概要」、第6章「ディープラーニングの手法」、第7章「ディープラーニングの研究分野」は技術的な内容を学ばなければなりませんが、これらについては前回のレポートに書いたような方法で勉強して、最後にこのテキストでおさらいするのがいいと思います。

次回のG検定(7月6日)まであと約2週間、効率的に頑張りましょう!

GDEPアドバンス ExecutiveAdviser 林 憲一

林 憲一
1991年東京大学工学部計数工学科卒、同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバーSunFireの開発に携わる。その後マイクロソフトでのHPC製品マーケティングを経て、2010年にNVIDIA に入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPU コンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティングに従事し、GTC Japanを参加者300人のイベントから5,000人の一大イベントに押し上げる。2019年1月退職。同年3月GDEPアドバンスExecutive Adviserに就任。日本ディープラーニング協会のG検定及びE資格取得。

 

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