デジタル変革(DX)の本質はデータの少なさ

2021.09.16 KEN'S REPORT

911のテロから20年経ちました。当時私はSun Microsystemsでハードウェアエンジニアとして働いていました。2001年3月までシリコンバレーの本社でSun Fireというエンタープライズサーバーの開発をしていて、帰国してわずか半年後の出来事で大変驚いたのを覚えています。またワールドトレードセンターに突っ込んだ飛行機にはSunの同僚も乗っていましたし、ワールドトレードセンターにはSunのニューヨークオフィスがあったので、それも心配でした。飛行機に乗っていた同僚は亡くなりましたが、Sunのオフィスは低層階にあったので社員は全員無事でした。当時のSunのCEOのスコット・マクネリーはテロに屈してはならない、と言って、テロの一週間後にニューヨークで予定されていたエンタープライズサーバーの新製品発表イベントを予定通り行ったように記憶しています。いろいろなことがありましたが、20年経って世の中が良くなったのか、悪くなったのか、判然としないのが残念なところです。

さて2021年8月7日(土)に日本ディープラーニング協会主催の「合格者の会2021」が行われました。この会は日本ディープラーニング協会が行っているG検定・E資格の全合格者向けに行われる催事で、合格後も勉強を続けられるように様々な情報提供がありました。中でも理事長の松尾豊東京大学教授の特別講演は大変興味深いものでした。

まず最近の技術動向で、相変わらずディープラーニングの世界は進歩が速く様々な成果が出てていることや、GPT-3のように計算規模やデータ量、パラメーター数を増やせば精度が上がることが示されるなど、物量がモノをいう状況にもなっていることも紹介されました。

またDXのためのDLという観点での日本の取り組むべき課題なども話されました。

この会には合格者だけが参加出来ますが、当日のビデオは日本ディープラーニング協会のYouTubeチャンネルで一般に公開されています。是非ご覧ください。

また翌週の2021年8月12日にはG検定・E資格合格者向けの勉強会であるCDLE勉強会が行われました。講師はあの「ヒントンに敗れた男」である牛久先生でした(2012年にヒントン先生のグループが優勝したImageNetで2位だったのが牛久先生です)。牛久先生の講演は前半と後半に分かれていて次のAIとDXに分かれていて、前半のAIの動向の部分ではTransformerやMLPの分かりやすい解説がありました。

後半のDXの話しでは、私は個人的に初めて納得出来るDXの話しを聞いた気がしました。

デジタル変革には4つのステップがあり、デジタル化や共通基盤化、そして自動化を経て真の変革に至ると牛久先生は言います。

デジタル変革の目指すところは「変革」で、世界に先駆けて起こす破壊的創造ですから、過去に類例はなく、AIでは出来ないところです。

よくDXのセミナーなどでは、デジタイゼーションからデジタライゼーションを経て、デジタルトランスフォーメーションだ、などという話しをよく聞きますが、これは大手のSIベンダーがずっと稼ぎ続けるための、ユーザー企業にとっては無間地獄のような話しだとずっと思ってきましたが、牛久先生の仰るように、データから学ぶ現代AIに過去に例のない「変革」が起こせる訳もなく、ここは人間が脳みそを振り絞るしかないところなのでしょう。

CDLE勉強会もG検定・E資格合格者のみが参加出来ますが、イベントから1か月が経って、こちらも日本ディープラーニング協会のYouTubeチャンネルで一般公開されているので誰でも見ることが出来ます。

合格者の会の松尾先生の特別講演と、CDLE勉強会の牛久先生の講演を合わせて聞くと、最近のAIの動向やこれからの方向、またDXについて理解が深まると思いますので、是非両方ご覧になることをお薦めします。

株式会社ジーデップ・アドバンス ExecutiveAdviser 林 憲一

林憲一
1991年東京大学工学部計数工学科卒、同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバーSunFireの開発に携わる。その後マイクロソフトでのHPC製品マーケティングを経て、2010年にNVIDIA に入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPU コンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティングに従事し、GTC Japanを参加者300人のイベントから5,000人の一大イベントに押し上げる。2019年1月退職。同年3月 株式会社ジーデップ・アドバンス Executive Adviser に就任。
日本ディープラーニング協会のG検定及びE資格取得。2020年12月より信州大学社会基盤研究所特任教授。

 

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