KEN’S REPORT「2021年10月レポート」

2021.11.02 KEN'S REPORT

10月27日から29日に幕張メッセで第2回人工知能EXPO 2021【秋】が開催されました。私は3日間幕張メッセに通いましたが、日に日に来場者が増えて3日目にはコロナ前のような人出となりました。AI EXPOには毎回参加していますが、過去数回のAI EXPOは会場が寒々としていていましたが、やっと熱気が戻ってきました。こういうイベントは一種お祭りですから、人の賑わいがあるとやる気も出ます。

(AI・人工知能 EXPO YOUtubeチャンネルより)

3日間の会期中、いくつかのセミナーに参加をしました。初日は日本ディープラーニング協会の岡田事務局長や人材育成委員の野口竜二さんが参加した「DX時代の人材戦略最前線」というセッションに参加しました。ゲストにNECと損保ジャパンの方が来て、それぞれの会社の人材戦略をご紹介されました。各社の取り組みは非常に面白く、特にNECの取り組みは興味深く感じました。NECのような大きな会社であるとAI人材は数千人単位で必要となるので、この人材を社外に求めるわけにはいかず、自ずと社員を再教育する必要があるわけですが、まずどこから手をつけるのか、最初に誰を選ぶのか、再教育のコスト負担や、再教育をいつまでやるのかといったような戦略が非常に明確になっていて、なるほどと言う感じがしました。

3日目には日本ディープラーニング協会理事長の松尾先生のご講演がありました。講演ではこれまでの松尾先生ご自身の取り組みを振り返り、大学でのAI教育や研究室からスタートアップを輩出したこと、JDLAでの人材育成やDCONを通じて高専生を起業させたことなどをお話しされました。それが何のためだったのか、結局自分は何を目指していたのか、というとこの式のtを大きくしていたのだ、という話しをされました。

この式は複利計算の式で、aは元本、rは利率、tは時間です。松尾先生はこの時間を表すtを大きくすることこそ自分がして来たのだと話されました。複利計算では通常は利率rを大きくしようとするもので、年率何パーセントで伸びていけば複利でどんどん大きくなると言うのは常識で、例えば日本は2008年に中国にGDPで抜かれた後、既に中国のGDPは日本の3倍になっているわけですが、これはまさに複利の効果です。日本はこのrがずっとゼロに近く、デフレを脱却してGDPを伸ばすということを一生懸命やろうとしている訳ですが、松尾先生が仰るには、今世界はrを大きくするのではなくtを大きくする競争をしているそうです。なので日本は競争している土俵が違う、ゲームのルールが違うのです。tというのは時間ですから世界中の誰もが共通のものと思えるのですが、このtを大きくするのがデジタルトランスフォーメーションの本質だ、と松尾先生は仰っていました。

世の中のクロックサイクルがどんどん早くなっていると常々松尾先生は仰っていますが、そのサイクルをさらに速めるのがデジタルトランスフォーメーションであって、人間が介在するところを減らし、デジタル化をして自動化していく。早く失敗して、そこから学び、さらに加速をする。深く検討するより仮説を立ててどんどんやってみる、それを繰り返してさらにサイクルを速くする、つまりtを大きくすることができる、という訳です。

デジタルトランスフォーメーションでサイクルを100倍にすることが出来れば、rが小さくても指数関数的に伸びていきます。まさにGAFAの売上などを見るとこのような指数関数的な売り上げになっていて、電気自動車のTESLAも製造業ではあるけれども、その売り上げをみると指数関数的になっていて、販売代理店を持たないとか、オンライン販売をするとか、製造を自動化するとか、ソフトをOTAで更新するとか、人の介在を減らし、ビジネスのサイクルを速くする手段だけを選んでいます。このサイクルを早くしてtを大きくするのが、デジタルトランスフォーメーションの本質なのだ、ということです。

日本が争っているゲームは違うゲームであって、だからこそ日本は負け続けてしまうのです。確かにこれは非常に面白い考え方で、違うルールのゲームをいくら戦っても日本は負け続けるばかりであると言うのも非常に納得出来るところです。いまだに判子を押すとか、ファックスを送ると、人間が介在するようなことをやっていては到底tは大きくなるはずはなく、アナログな部分をいかに減らして自動化して、サイクル早くすることを目指していかなければいけないんだろうと改めて思いました。

今回は私はイギリスのAI半導体企業のGRAPHCOREのブースで3日間講演を行ないました。AI半導体の会社は世界中にいくつかありますが、このGRAPHCOREの作っているAI半導体は非常に興味深いので、私はこれが今後のAI半導体の基本になって行くのではないかと思っています。ブースでは時間の制約があって手短に話しましたが、言いたかったことをビデオにまとめましたので、もしご興味があれば見て頂ければと思います。(34分58秒あります。1.5~2倍速で見てください)

ジーデップ・アドバンスでもGRAPHCORE製品をオンプレミスや専有クラウドで提供しています。ご興味のある方は弊社営業までお問い合わせ下さい。
それでは今月のレポートはこれで終わりにしたいと思います。

株式会社ジーデップ・アドバンス ExecutiveAdviser 林 憲一

林憲一
1991年東京大学工学部計数工学科卒、同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバーSunFireの開発に携わる。その後マイクロソフトでのHPC製品マーケティングを経て、2010年にNVIDIA に入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPU コンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティングに従事し、GTC Japanを参加者300人のイベントから5,000人の一大イベントに押し上げる。2019年1月退職。同年3月 株式会社ジーデップ・アドバンス Executive Adviser に就任。
日本ディープラーニング協会のG検定及びE資格取得。2020年12月より信州大学社会基盤研究所特任教授。

 

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