KEN’S REPORT「AIの社会実装」

2019.12.05 KEN'S REPORT

先日中国広東省の広州に行って来ました。広州は北京、上海に続く中国3大都市であり、清の時代には唯一海外に開かれた港町で、アヘン戦争や孫文の蜂起など、近代中国史の舞台でもあり、また「食在広州」の言葉が示す通り、食の都でもあります。

高さ600メートルの広州タワーKen_Nov-1


10月25日付の日経新聞の記事「中国の決済、スマホ要らずの「顔認証」時代へ」にもあるように中国では現在「顔認証」による決済が盛んに行われるようになっています。中国の地下鉄では切符の他、日本のようなICカードに加えて、最近はアリババのAliPayやテンセントのWeChat PayなどのQRコードでも乗れるようになってきていますが、さらに広州の地下鉄では顔認証で改札機を通過出来るようになっています。

顔認証に対応した地下鉄広州タワー駅の改札機
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私は登録していないので顔パスは出来ないので切符を使いましたが、改札機には顔認証用のタブレットのようなものが埋め込まれています。また身分証明書や指紋でも乗れるようです。中国人は日本のマイナンバーカードのようなICチップ入りの身分証明書を常に携帯していて、博物館に入るときや新幹線に乗るときなどは切符に加えて身分証明書をタッチすることが必須になっていますが、この身分証明書に登録されている顔写真と照合し、さらに身分証明書に紐づいた支払手段で決済することで顔認証決済による利便性とセキュリティ管理を同時に実現しようとしているのだろうと思います。電車に乗るのも実名のチェックということになり、超監視社会ということだろうとは思いますが、日本の新幹線などはセキュリティチェックも本人確認もなく、いつテロが起こっても不思議ではないので、マイナンバーカードを利用した本人確認くらいはした方がいいのではないか、と個人的には思います。

指紋や身分証明書に対応した地下鉄広州タワー駅の改札機
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顔認証というと日本でも2年ほど前から羽田空港や成田空港の顔認証ゲートで、パスポートに登録された顔写真のデータとゲートに来た人のカメラ画像を照合して出入国管理をしていますが、ここにもディープラーニングが使われています。出入国管理は国境に来た人を日本国に出入国させるか、させないか、という「国家権力」の行使の場であるので、その判断を法務省はAIに委ねている訳です。
顔認証ゲートについてはここで取られた画像データを、誰が、どこで、いつまで、どのように管理・保管・利用するのか、と問題視する人もいるようですが、AIの社会実装ではいつも議論になるところです。AIの利用は利便性とのトレードオフでもあり、AI技術を正しく理解するG検定保持者などが社会のコンセンサスを取る指導的な役割を果たすべきでしょう。

11月17~22日に米国デンバーでHPC業界最大のイベントであるSC19が行われ、世界中から13000人以上が参加しました。恒例のTop500も発表され、IBM Power9 CPUと NVIDIA Tesla V100 GPUからなる米国エネルギー省オークリッジ国立研究所のスーパーコンピュータSUMMITが前回に続き世界最速の座を148.6PFlopsで守り、500システム中136がNVIDIA GPUを使用したマシンでした。合わせて発表された電力効率の良いスパコンのランキングであるGreen500でもGPUを利用したシステムが上位をほぼ独占し、GPUが性能と電力効率を両立させるアクセラレータであることが改めて示されました。今回1位に初登場したのは理研が開発中の次世代スーパーコンピュータ富岳のプロトタイプで、このシステムは富士通の開発したArmベースのプロセッサA64FXを利用したシステムで、GPUは使われていません。エクサフロップスへと進むHPCの世界で最も大きな壁になっているのは電力消費であり、電力効率のよりArmプロセッサが今後HPCの世界でも広く使われるようになるかもしれません。

SC19中に行われたエヌビディアの創業者でありCEOのジェンスン フアンの講演でもArmへの対応が発表され、ArmプラットフォームでのGPUの利用を促進するためのArmリファレンスデザインプラットフォームやCUDA Toolkit for Arm などが発表されました。
とは言え今回のSC19での発表は小粒で小出しで、おそらくはこれから続く大イベントに大きな発表は残されているのではないか、と想像しています。12月8日から始まるNeurIPSは今回初めてSCより大きな会議になりそうですし、12月16日からのGTC Chinaや1月のCES2020など要注目のイベントが続きます。また大きな発表があればこのレポートでも取り上げたいと思います。

GDEPアドバンス ExecutiveAdviser 林 憲一

林 憲一
1991年東京大学工学部計数工学科卒、同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバーSunFireの開発に携わる。その後マイクロソフトでのHPC製品マーケティングを経て、2010年にNVIDIA に入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPU コンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティングに従事し、GTC Japanを参加者300人のイベントから5,000人の一大イベントに押し上げる。2019年1月退職。同年3月GDEPアドバンス Executive Adviser に就任。日本ディープラーニング協会のG検定及びE資格取得。

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