KEN’S REPORT「AI崩壊」

2020.03.05 KEN'S REPORT

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映画「AI崩壊」を観てきました。冒頭に松尾先生が松尾先生役で登場しています。自分役というと、昔々地球物理学者の竹内均東大教授が映画「日本沈没」に竹内均東大教授役で出て、プレートテクトニクスの説明をしていたのを思い出します。「私は映画『日本沈没』に竹内均役で出ました」というのが竹内先生の鉄板ネタで、何度も聞かされました。映画「AI崩壊」はAIの暴走が描かれていますが、これはつまり「強いAI」の世界です。AIには囲碁の世界チャンピオンを破るような用途限定型の「弱いAI」と汎用人工知能、Artificial General Intelligence、とも言われる「強いAI」という考え方がありますが、現在可能になっているのは用途限定型の「弱いAI」です。2030年に暴走するような「強いAI」が実現しているか分かりませんが、映画が描くように医療の世界では広く使われるようになっているかもしれません。もう一つ映画で気になったのは2030年の東京で、いまと全く変わっていません。低予算の映画のせいか、あるいは10年経っても東京は全く進歩していないことを表現しているのか、その両方かもしれませんが、10年後の東京がキラキラしていないことがちょっとショックでした。

 先日新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)北京事務所長の大川龍郎さんの講演を聞きました。テーマは「北京を中心とした中国のイノベーション・ベンチャー事情」でした。中国のVC投資件数は2015年くらいから少し減ってきているようですが、投資額は増えていて、日本の15倍くらいの規模になっています。ユニコーン企業も増えていて100近くあり、アメリカに次いで世界2位です。分野としてB to Cが約60社で最も多く、次にAIなどが約20社となっています。ユニコーン企業の多くは2010年から2014年頃に創業した会社が多く、これは2010年頃から大学の卒業生が500万人と突破したことに呼応していると大川さんは推定しています。最近では中国の大学卒業生は毎年700万人を超え、そのうち、56万人が起業に参加するそうです。既に日本の大学卒業生よりも多い数が起業するというのは驚きです。
中でも北京には北京大学や清華大学などの有力大学に加え、マイクロソフトやグーグルなどのアメリカの大手企業の研究所、さらにバイドゥの本社などがあり、人材を育成するには最適な環境になっています。中国のベンチャー企業の視察ということになるとまずは深圳ということになる日本人が多いようですが、確かにハードウェア系のベンチャーは深圳に多いですが、注目すべきスタートアップは北京に集積しているのです。

日本人は中国のベンチャー企業がいくら勢いがあるといっても、インターネット関連のB to C系やAI系など、最近の流行りに乗った「軽い」企業が多く、製造業やバイオなど「本格的な」企業は少ない、と見ていることが多いようですが、中国でベンチャー企業の企業が増えた2010年以降、そのような「本格的な」企業もたくさん生まれており、成果を出すのに時間がかかっているだけで、数年後にはそのようなベンチャー企業が芽を出してあらゆる分野で日本は太刀打ち出来なくなるのでは、と予想していました。

さて2月21日(金)と22日(土)に2020年最初のE資格の試験が行われましたが、どうだったでしょうか(2日間のテストではなく、どちらか選んで受験)。今回は初めて平日にも実施され、業務で受ける方が受けやすかったようですが、1,042名受験して709名合格されました。E資格はかなりレベルが高いので、合格された方は是非その能力を活かして活躍して頂ければと思います。そして3月14日(土)にはG検定もあります。受験される方は最後の追い込みを是非頑張ってください。合格した「AI人材」の方々の頑張りで、10年後の東京、そして日本をキラキラさせましょう!

林 憲一
1991年東京大学工学部計数工学科卒、同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバーSunFireの開発に携わる。その後マイクロソフトでのHPC製品マーケティングを経て、2010年にNVIDIA に入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPU コンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティングに従事し、GTC Japanを参加者300人のイベントから5,000人の一大イベントに押し上げる。2019年1月退職。同年3月GDEPアドバンス Executive Adviser に就任。日本ディープラーニング協会のG検定及びE資格取得。

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