KEN’S REPORT「2021年の展望」

2021.01.26 KEN'S REPORT

2021年の展望

2021年も早くも一ヶ月が過ぎようとしています。大変遅くなりましたが、皆様明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。


さて今年もCESが開催されました。CESは1967年から続いている歴史のある展示会で、以前はConsumer Electronics Showの名の通り家電見本市として開催されて来ました。近年は自動運転車が多く展示されるなどモーターショーのようになり、またロボットやドローンなど、最新の人工知能関連の展示が多く行われるなど、重点領域が大きく変わり、名称もCES(Consumer Electronics Showとスペルアウトして表記しない)と変わり、日経新聞では「デジタル技術見本市」と紹介されています。今年はCESの長い歴史の中で初めての完全オンライン開催となりました。CES開催期間中は非常に多くの発表が行われ、ニュースを確認するだけでも大変ですが、昨年10月のKEN‘S REPORTでも紹介したVMwareのPat Gelsingerが新しいインテルのCEOに就任する、という発表もありました。
NVIDIA関連ではGeForceの責任者であるJeff Fisherから最新のGeForce RTXを搭載した多数ゲーミングノートPCの発表がありました。ちなみにJeffは1994年からNVIDIAにいるので最古参の一人です。

現在CESは世界で最も注目すべき展示会、などとも言われていますが、私の個人的な印象では、ラスベガスという虚飾の街で開催されるせいか、発表内容にはかなりの誇張があるように思っています。CESでCEOが発表した資料を急いで日本語に訳して、日本のお客様やパートナー様に紹介すると、数ヶ月後には、そんなこと言ったっけ、みたいに本社から梯子を外されたことも何度もあります(笑)。以前CESではマイクロソフトのビル・ゲイツが毎年講演をしていましたが、まだ作ってもいない製品の発表をして、観客の反応が良かったら実際に作り始める、などという話しも聞いたことがあり、CESでの発表は鵜呑みにしてはいけません。その点今年はラスベガスではなく、オンラインだったので、誇張は少なかったような気もします。

1月20日には日本ディープラーニング協会主催の「NeurIPS 2020技術報告会」が開催されました。NeurIPS(Neural Information Processing Systems)は機械学習分野の世界最高水準の学会です。1987年に始まったNeurIPSでは、AlexNetやTransformerなどAIの歴史を変えるような革新的な発表が数多くされています。また発表される論文数の多さでも知られており、2020年は9,500件ほどの投稿に対し、約2,000件の論文が採択されています。これを一人で読むのには1年半もかかると言われており、事実上不可能です。この技術報告会ではNeurIPSの多数の論文の中からG検定・E資格合格者に役に立ちそうな論文を選んで、5人の発表者から計9本の論文について、それぞれ研究の背景や提案手法の紹介、その実験結果などが紹介されました。世界最高のAI学会での最新論文ですので、その内容を理解するというのは難しいとは思いますが、世界の最先端ではこんなことが起こっている、という雰囲気は感じ取るにはいい機会だったと思います。一ヶ月後にはビデオの一般公開もされるので、是非ご覧ください。


また同じく1月20日はアメリカ大統領の就任式が行われ、第46代大統領に民主党のジョー・バイデン氏が就任しました。ここ数年顕在化した米中の覇権争いは今後どうなるのか、日本はどうすればいいのか、をしっかり考えないといけないと思います。
この数十年、日本人は基本的にアメリカに勝てるとは思っていない、あるいは挑もうとも思っていないと思います。バブルの頃は鼻息が荒くて今度こそアメリカに勝つぞ、くらいな雰囲気もありましたが、日米貿易摩擦で怒られて、バブル崩壊後はずっとシュンとしたままです。出来ることと言えば、アメリカのご機嫌を損ねない範囲で自由に出来るのはどの辺りまでか、を探ることくらいです(アメリカ企業の日本支社の社員が日々やっているのがまさにこれです(笑))。中国に対しても同じように見ている日本人が多い気がします。つまり、中国もアメリカにかなうはずがなく、そんなことをするとアメリカに怒られるよ、ほら怒られた、というような見方です。しかし私はこれは根本的に間違っていると思います。中国は2035年までに政治的にも経済的にも軍事的にも文化的にも世界の頂点に立とうとしており、4年毎に代わるアメリカ大統領が与しやすい相手かどうかは重要ではなく、誰が大統領であれ、トップを目指しているからです。トップに立つためには競合が手を緩めてくれるのを期待するのではなく、自分のレベルを自分で上げていくしかありません。その一つの例が昨年11月に報じられた華為が上海に作ったという半導体の研究所です。華為はこれまで子会社のハイシリコンによって最先端の5nmの半導体の設計を行ってきましたが、製造はTSMCに委託しており、半導体製造技術を全く持っていませんでした。上海に新たに作った研究所では45nmプロセスから始めると言われており、かなり古いプロセスですが、これは半導体製造を一から勉強する、ということの表れで、最近では半導体を設計するためのEDAツールの会社に出資するなど、開発ツールの内製化も進めています。ここから世界一の半導体設計・製造を目指すのは遠い道のりとは思いますが、挑まなければ達成出来るはずもなく、その気概は見習いたいものだと思います。

林 憲一
1991年東京大学工学部計数工学科卒、同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバーSunFireの開発に携わる。その後マイクロソフトでのHPC製品マーケティングを経て、2010年にNVIDIA に入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPU コンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティングに従事し、GTC Japanを参加者300人のイベントから5,000人の一大イベントに押し上げる。2019年1月退職。同年3月 株式会社ジーデップ・アドバンス Executive Adviser に就任。日本ディープラーニング協会のG検定及びE資格取得。

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