KEN’S REPORT「2025年の職場環境」

2021.08.03 KEN'S REPORT

オリンピックが盛り上がっていますが、ご覧になっていますか?私はついついテレビ局をはしごして見続けてしまいます。我が家からすぐ近くでやっているし、地元でオリンピックが行われるのは生涯一度の機会でしょうし、重量挙げのチケットが当たっていたので会場で見たかったです。また今回からの新競技も面白く、特にBMXはやってみたくなりました。
私の将来の夢はBMXの選手になることです!

去年12月に信州大学の社会基盤研究所の特任教授となり、今年4月から週に一回松本キャンパスで授業を始め、7月末に無事前期の15回の授業を終えました。信州大学は対面授業をしているので、毎週松本キャンパスに通って授業をしました(松本に行く度に国宝松本城の写真を撮りました)。

私が担当したのは全学部(医学部、理学部、工学部、農学部、繊維学部、教育学部、経法学部、人文学部)を対象にした「ライフクリエーター入門講義」で、「これから長くAIと共に暮らすことになる君たちはAIに支配されるのか?AIを活用して人生を切り拓く人材、ライフクリエーターになるのか?」をテーマに、現代AIの基礎を事例や機械学習の技術、AIに関わる法律や倫理、AIと職業などの観点から講義しました。全学部の学生が参加している授業なので、技術に偏らず、AIを扱う上で重要な法律や倫理も重視しました。また「AI」という課題がある訳ではなく、それぞれの学生が専門分野を学ぶ中で医療や農業などそれぞれの課題を解決する一つの手段としてAIがあり、その課題をAIで解決するために、技術だけではなく、法律や倫理、営業・マーケティングなど様々な観点で学際チームを作って検討するべき、ということを強調しました。

信州大学は戦前の旧制松本高校を中心に、長野県内の様々な学校が一緒になって戦後出来た国立大学なので、医学部、理学部、経法学部、人文学部は松本市、工学部と教育学部は長野市、繊維学部は上田市、農学部は伊那市など県内各地にキャンパスが広がっていますが、1年生の間だけは全学部の学生が松本キャンパスにいるので、学際的な取り組みをするのに最適です。

授業の終盤ではAIと職業をテーマに2回話しました。AIと職業というと2015年に野村総研が発表した「日本におけるコンピューター化と仕事の未来」に関するレポートが有名で、AIで大失業などと当時メディアなどでも盛んに取り上げられました。それによれば日本の49%の職業がITによる自動化などによって代替され、その割合は欧米各国と比較して高い値になっています。これは日本のIT後進国ぶりを如実に表すもので、昔ながらの単調な繰り返し作業に従事している人が多い事を示しています。

「AIと職業」のテーマでもう一つ話したのは2025年の職場環境についてです。これにはZOZOテクノロジーの野口竜司さんの著書「管理職はいらない AI時代のシン・キャリア」を参考にしました。2019年に文部科学省が日本の全ての大学・高専生は学部を問わずAIを勉強してから卒業するように指導したので、現在日本中の大学・高専でAIの授業が始まっており、その教育を受けた学生が卒業して社会に出始めるのが2025年です。つまり2025年以降は毎年50万人の若者がG検定レベルの知識を持って世に出て来るのです。また2025年頃にはAIによる業務サービスも進み、AIを部下のように使いこなす必要が出て来ます。また一方AIや新しいテクノロジーを学ぼうとしない部下もいて、そんな環境の中で管理職としてあなたはどうすべきか、が本書のテーマです。

野口竜司著「管理職はいらない AI時代のシン・キャリア」(SB新書)より引用

この図の「AI時代の管理職」、「AI部下」、「AIネイティブな人間部下」、「非AIネイティブな人間部下」は以下のような人たちです。

・AI時代の管理職
  - AIの仕組みを理解して使いこなし、KKD(経験、勘、度胸)によらない管理職としての本質的な役割を果たすリーダー

 ・AI部下
  -「AIなどの新興技術が2024年までに、管理職のルーティンワークのほぼ70%を代行するようになる」米ガートナー(2020)
  - 従来人間のアシスタントがやっていたようなスケジュール管理やプレゼン作成などをAIが代替する

・AIネイティブな人間部下
  - スマホやクラウドを使いこなし、AIによるリコメンデーションなどに慣れ、高校、大学でAIの理論も学んだ若者たち

・非AIネイティブな人間部下
  - 時代に対応出来ない人たち

この本は管理職の人を対象にした本ですが、これを学生の視点から考えてみました。15回の授業を通して、学生たちはスマホとクラウドを使いこなし、AIによる最適化(YouTubeやTikTok、Amazonのアルゴリズムなど)を肌で感じて生活しているまさにDX後に生きている人達だと分かりました。彼らはその背後にある技術的な仕組みなどは知らなかったことも多いようですが、授業を通してAIの仕組みや課題を知ったので、感覚的にも技術的もAIを体感・理解している、まさにAIネイティブ世代です。もし彼らが2025年に就職し、図のような「AI時代の管理職」の元に配属されれば幸運で、その力を発揮するでしょう。しかしいまの日本の状況を見ると「非AIな管理職」の元に配属される可能性も高く、もしそんな職場に配属されたらさっさと転職するように指導しました(笑)。AIネイティブな若者たちにそっぽを向かれないためにAIの勉強をして頭で理解するだけではなく、どんどん利用してAI感覚を身に付けていく必要があります。

さて2021年7月17日には今年2回目のG検定が実施され、7,450名が受験し、4,582名が合格しました。合格した方はまずはおめでとうございます。合格後も是非「AIネイティブな若者」たちを迎えるために、教科書の丸暗記だけではなく、AIをどんどん利用して、AI感度を上げて行って下さい。またJDLAでは行政機関におけるデジタル人材育成を支援するために行政会員制度も始めています。その趣旨に真っ先に賛同し、進取の取り組みをしている行政機関が名乗りを上げています。みなさんの自治体はどうでしょうか?

株式会社ジーデップ・アドバンス ExecutiveAdviser 林 憲一

林憲一
1991年東京大学工学部計数工学科卒、同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバーSunFireの開発に携わる。その後マイクロソフトでのHPC製品マーケティングを経て、2010年にNVIDIA に入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPU コンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティングに従事し、GTC Japanを参加者300人のイベントから5,000人の一大イベントに押し上げる。2019年1月退職。同年3月 株式会社ジーデップ・アドバンス Executive Adviser に就任。
日本ディープラーニング協会のG検定及びE資格取得。2020年12月より信州大学社会基盤研究所特任教授。

 

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