KEN’S REPORT 「大きいメモリーは正義!」

2020.11.24 KEN'S REPORT

10月28日から30日に幕張メッセで第一回AI・人工知能EXPO【秋】が開催されました。AI EXPOは春に行われて来ましたが、AIの変化の速さに合わせて年二回開催になって最初の開催でした。主催のリードエグジビションジャパンによれば3日間合計の来場者は8,449人でかなり少なかったですし、おそらくは出展を取りやめた企業も多く、全体の面積が大幅に縮小した上で空き地も目立ちました。私は設営も含めて4日間幕張メッセに通いましたが、久しぶりの物理イベントで多くの知り合いに会え、有意義な時間を過ごせました。また何よりこういう物理イベントのメリットは企業の栄枯盛衰を知ることが出来ることで、前回まで小さな出来合いのブースだったスタートアップが大きなブースに凝った造作などをしていると事業がうまく行き、大きな投資を受けたんだろう、と想像出来ますし、ブースが縮小したり、撤退したり、とビジネス状況を厳しさも予想出来ます(もちろんこういう共同イベントを「卒業」して、自社イベントに集客出来るようになった企業もあります)。そんな観点で今回のAI EXPOを眺めると、大きなブースを出していたのは華為技術日本やギリアで、このコロナ禍でも積極的な取り組みが伺えますし、今まで知らなくて急に大きく立派なブースを出してきたところとしては韓国系のailysがあります。既に日本企業でもかなり使われているようで、日本の大企業の事例紹介なども多数ありました。また今回併設されたブロックチェーンEXPOや量子コンピューティングEXPOの方がAI EXPOより賑わっており、業界の流行り廃りも感じることが出来ました。

今年の11月半ばに世界最大のHigh Performance Computing業界最大のイベントSC20が開催されました。今年はオンラインでの開催でしたが、このイベントに合わせて世界のスパコンランキングであるTop500や、HPC関連企業からの新製品の発表が多数ありました。

TOP500_SC20

(出典:top500.org)

今回のTop500は1993年にTop500が始まって以来、最も順位の入れ替わりの少ない(Low Turnover)リストになったようで、概して無風ということになりました。理研の富岳も全システムが稼働して若干性能が上げ首位を守り、HPCG、HPL-AI、Graph500でも一位となり、バランスの取れた世界最速のスパコンであることを示し続けています。NVIDIA関連では自社システムのSeleneが規模を倍増して前回7位から5位に順位を上げました。また前回は伏兵のPFNにかわされたGreen500もきっちり1位を取りました。

green500_2020nov

(出典:top500.org)

新製品としてはメモリーが80GBになったNVIDIA A100が注目されます。最近のディープラーニングのモデルは巨大化が進み、大規模メモリーが必須となっていますが、自然言語処理系の巨大モデルに限らず、メモリーの大きさは機械学習・ディープラーニングの学習において強みであり、おそらくはこの80GBメモリーモデルが今後各種ベンチマークの上位を独占するでしょう。昔からスパコンを買うことはメモリーを買うことだ、と言われて来ましたが、大きいメモリーは正義であり、データを演算機の近くに置いてなるべく動かさないことこそ最適化の要諦であり、予算の許す限り大きなメモリーのシステムを購入すべきです。

NVIDIA_A100_80GB

NVIDIAからは他にもA100を4基搭載したNVIDIA DGX Station A100や次世代のInifiniBandが発表されています。この辺りはSC20瓦版にまとまっています(以前は会場でこれを作って日本人向けに配っていました)。

kawaraban_202011

Top500の過去の傾向ではLow Turnoverだった後のリストは荒れることが多いです。次回2021年6月のリストは大波乱がありそうな予感がしますが、どうなることでしょう。とても楽しみです。

さて11月7日に今年3回目となる日本ディープラーニング協会のG検定が行われ、7,250人が受験し、4,318人が合格しました。これでG検定の累計合格者は3万人を超えました。11月28日には今回の合格者も迎えて合格者の会であるCDLE DAY 2020が開催されます。CDLE DAY 2020では「AIと倫理」の研究で著名な東京大学の江間先生が「G検定教科書9章に苦しめられてきた人たちへ」と題して講演されます。講演概要は以下の通りで、私も楽しみにしています。今回合格された方は是非ご聴講下さい。

 『深層学習教科書 ディープラーニング G検定 公式テキスト』の「9章ディープラーニングの応用に向けて(2) 法律・倫理・現行の議論」は必要なのか。そんな声が9章執筆者の一人である私の耳にも時々聞こえてきます。9章的な視点がないと、最後の最後でサービス提供ができなくなる、炎上する、そもそも幅広いユーザに受け入れてもらえない、国際展開できない。そんなことが本当に起きるのだろうか、と懐疑的な人たちへ。いくつかの国内外の事例をもとにして、合格者の皆さんと9章の存在意義について考えてみたいと思います。

実は今回のG検定に私の妻も合格しました!妻は私の書いた「G検定勉強法」に忠実に従って合格したので、他の方にもお役に立てば幸いです。次回G検定は4ヵ月後の2021年3月20日(土)です。波乱の2020年度の最後に受けてみてはいかがでしょうか。

 

林 憲一
1991年東京大学工学部計数工学科卒、同年富士通研究所入社し、超並列計算機AP1000の研究開発に従事。1998年にサン・マイクロシステムズに入社。米国本社にてエンタープライズサーバーSunFireの開発に携わる。その後マイクロソフトでのHPC製品マーケティングを経て、2010年にNVIDIA に入社。エンタープライズマーケティング本部長としてGPU コンピューティング、ディープラーニング、プロフェッショナルグラフィックスのマーケティングに従事し、GTC Japanを参加者300人のイベントから5,000人の一大イベントに押し上げる。2019年1月退職。同年3月 株式会社ジーデップ・アドバンス Executive Adviser に就任。日本ディープラーニング協会のG検定及びE資格取得。

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