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自己修復型大容量ストレージを支える技術 ― ADAPT・ADRの実力

2026.03.09 テックブログ

Seagateストレージの強みとは?Exos CORVAULTの特長


先日、当社サイト内でNetApp社やDDN (Data Direct Networks)社、そしてSeagate社などのストレージをご紹介するページのリニューアルを行いました。各製品の特長を分かりやすく説明しておりますので、ぜひご覧ください。 

今回はその中でも、Seagate社の製品特長について、もう少し詳しくご紹介します。 

DDN、NetApp、Seagateの3社は、いずれもストレージ(データ保存)に関連する企業ですが、その立ち位置や得意とする領域、製品の性質が大きく異なります。 
 

■ DDN社 ―「極限のスピード」 

 

DDN社は、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)やAI分野など、超高速データ処理が求められる環境に強みを持つストレージベンダーです。 
圧倒的なスループット性能と並列処理能力により、大規模計算・解析用途で多くの導入実績があります。 
 

■ NetApp社 ―「データの管理・運用」 


NetApp社は、エンタープライズ向けストレージとして、データ管理や運用効率化に優れています。 

データの保護、バックアップ、クラウド連携、重複排除など、運用面の高度な機能が充実しており、企業の基幹システムを支える存在です。 

 


 

ではSeagate社は、どのような製品を展開し、どのような特長があるのでしょうか。 

 

 Seagate Technology社(以下:Seagate社)は1979年に設立されたHDDやSSDという「ストレージデバイス」を製造するグローバルベンダーです。長年にわたり自社でドライブを製造しているため、圧倒的なコストパフォーマンスと大容量化の高度な技術を有しており、現在ではエンタープライズ用途に特化した製品も幅広く展開しています。 
 

そんなストレージベンダーであるSeagate社が自社の技術と製品を使って開発したストレージシステムが、Exos® CORVAULT™(エクソス・コーボルト)です。 

 

 

 

 

EXOS CORVAULTは、独自の高度な冗長化技術と自動リビルド機能により、「壊れても自分で治る、超大容量の賢いストレージ」です。 

 

膨大なデータを扱うデータセンターや研究機関向けに設計されており、従来のストレージが抱えてきたこととして、

  • ✓ メンテナンスにかかる手間 
  • ✓ ドライブ故障によるダウンタイム 
  • ✓ 運用負荷の増大 

 

といった課題がありますが、最新技術によって大きく改善しています。 

 

 Seagate EXOS CORVAULTの特徴 

 

1. ドライブが「自己修復」するSeagateADR (Autonomous Drive Regeneration) 

 

ADRは、HDDメーカーであるSeagateならではの「ドライブレベルの自己修復」技術です。従来のストレージでは、HDD内部の一部に障害が発生すると、ドライブ全体を交換する必要がありました。しかしADRでは、障害が発生しても“ドライブを丸ごと失う”とは限りません。 

 

  • ストレージ・エレメント・デポピュレーション(Storage Element Depopulation) 

  • HDD内部には複数の磁気ヘッドやプラッタ表面(記録面)が存在します。ADRでは、これらのうち特定のヘッドや記録面のみが故障した場合、 
    • ✓  コントローラーと連携し故障したパーツだけを論理的に切り離す(Depopulation) 
    • ✓  残りの正常なヘッド/表面を再構成することで、ドライブをオンラインのまま復帰 

 

  • つまり、「一部が壊れた=ドライブ全体が故障」ではなく、使える部分を最大限活かして再生するという発想。 

  •  
    • T10/T13規格準拠  

ADRは、業界標準であるT10/T13規格に準拠しています。 

「REMOVE ELEMENT AND TRUNCATE」などの標準コマンドを使用することで、 ホストOSからは“容量が少し減った正常なドライブ”として認識されます。 

特別な独自仕様に依存せず、標準規格ベースで動作する点も大きな特長です。 
 

 

  • ADRがもたらすメリット


  • Seagate ADRは、技術的な革新にとどまらず、運用面や環境面にも大きなメリットをもたらします。 

 

  • 保守コストの削減
  • 従来は、HDD内部のヘッド1つに不具合が発生しただけでも、ドライブ全体を交換する必要がありましたが、ADRでは故障した部分のみを論理的に切り離して再構成できるため、現地での物理的な交換作業を大幅に削減し、運用負荷の軽減につながります。 

 

  • 廃棄物の削減(サステナビリティへの貢献)

  • ADRは、まだ使用可能な部品を活かしてドライブを再生する仕組みです。 
  • その結果、物理的なドライブ廃棄を最小限に抑えることができ、電子廃棄物(e-waste)の削減につながります。 
  • これは単なるコストメリットにとどまらず、企業のサステナビリティ戦略や環境負荷低減への取り組みにも直結する重要なポイントです。 

 

  • ADR適用条件

① 18TB以上のエンタープライズHDDおよび特定のファームウェア 

② ADR対応のRAIDコントローラーによるADAPT構築 

③ シングルヘッドエラーまたはシングルプラッターのサーフェース 

 

2.  データの復旧が爆速


ADAPT(Advanced Distributed Autonomic Protection Technology) – 

ストレージの大容量化が進む中で、大きな課題となってきたのが故障時の復旧時間(リビルド時間)です。 
従来のデータ保護方式では、容量が増えるほどリビルドに要する時間も長くなり、場合によっては数日〜数週間を要することもありました。その間、システムはパフォーマンスが低下し、さらなる障害リスクにもさらされることになります。 
EXOS CORVAULTは、この課題を解決するために、ADAPT(Advanced Distributed Autonomic Protection Technology)という次世代の分散保護技術を採用しています。 
 

  • 分散パリティ(Distributed Parity): 

    データを特定のRAIDグループに固定せず、プール内の全ドライブ(12台〜128台)にデータ要素とパリティ要素を分散配置します。 
  •  
  • パラレル・リビルド(N対Nリビルド): 

    ドライブ故障時、残りの全ドライブが同時に読み取りと計算に参加し、空き領域(分散スペアキャパシティ)にデータを書き込みます。これにより、単一のホットスペアドライブへの書き込みボトルネックが解消されます。 
  •  
  • 柔軟な構成: 

    異なる容量のドライブを混在させることができ、システムの稼働を止めることなく1本単位でのドライブ追加が可能です。 

 メリット


  • リビルドの爆速化: 従来型RAIDでは、障害が発生したドライブが属するRAIDグループ内だけで再構築が行われるため、処理リソースが限定されます。一方、ADAPTでは、リビルド時間を最大95%短縮します。大容量HDD(20TB以上)でも数日ではなく、数時間で冗長性を回復できます。 
  • MTTDL(データ消失までの平均時間)の向上: リビルド時間が極めて短いため、2本目、3本目の連鎖故障が発生するリスクを最小限に抑えます。 

 

リビルド中の性能低下率比較 

 

では、従来のRAID 6と比較すると、どの程度のパフォーマンス差があるのでしょうか。従来のRAID 6と、分散型RAID技術ADAPTを比較してみました。 

構成技術 

データ保護方式 

1本故障時の性能低下率 (Throughput) 

リビルド時間 (18TB HDD想定) 

従来の RAID 6 (8+2) 

固定パリティ 

約 -41% 

約 50〜60時間 

Seagate ADAPT (106) 

分散型イレイジャーコーディング 

約 -10% 〜 -15% 

約 5〜7時間  (※構成による) 

 出典資料: 

  1. Seagate White Paper: “Data Protection with Seagate ADAPT” 
  1. Seagate Technology Brief: “EXOS CORVAULT: Autonomous Drive Regeneration (ADR)” 

  

  •  
  • 性能低下の理由:


  • 従来のRAID 6では、特定のスペアドライブ1本に対してデータが集中書き込みされるため、その「書き込み口」がボトルネックとなり、システム全体のI/Oが大幅に制限されます。 
  •  
  • 分散技術の優位性:


  • ADAPT、DCR、DDPはいずれも「プール内の全ドライブ」をスペア領域として使用します。全ドライブが並列で読み書きを行うため、1本あたりの負荷が極小化され、リビルド中のスループット低下を最小限に抑えられます。

    次に、Seagateの ADR(自己修復機能)がある場合とない場合での、5年間の運用コスト(人件費)をシミュレーションしてみました。 

 

 

  • シミュレーション条件
  • 規模:

    10PB(ペタバイト)規模のストレージ(約500本のHDDを使用) 


    故障率 (AFR):

    年率 2.0%(10PB運用で年間 約10件の故障発生) 


    保守対応コスト:

    1回の現地交換作業につき5万円(技術派遣料+人件費+交通費)と仮定。 

 

 

項目 

従来のストレージ 

Seagate CORVAULT (ADR有効) 

5年間の故障件数 

50件 

50件 

物理交換が必要な件数 

50件 

約 10件 (※1) 

自己修復(ADR)による復旧 

0件 

約 40件 

5年間の保守人件費合計 

250万円 

50万円 

削減効果 

比較基準 

80%削減 (約200万円のコスト削減) 

※1:磁気ヘッドの1つが故障した程度の「部分的故障」はADRで自動修復されるため、緊急の物理交換(=人の派遣)が不要になり、物理的なモーター故障や基板故障の場合のみ交換が発生すると仮定しています。 

出典資料: 

1.Data Protection with Seagate ADAPT (Seagate White Paper) 

2.EXOS CORVAULT: Autonomous Drive Regeneration (ADR) Technology Brief 

 

 まとめ 

  •  
  • 運用コスト(OPEX)の削減: 
  • HDDが故障しても「すぐ交換」に行く必要がありません。ADRが勝手に処理してくれるため、半年に一度まとめて交換するなどの運用が可能です。

  • 復旧が早い
  • ADAPTにより、HDD故障時のリビルド(復旧)時間が劇的に早い。数時間以内に冗長性を回復できます。 

  • 圧倒的な省スペース: 
  • 4Uサイズで2.5PB(次期モデルは3PB)を超える密度は業界トップクラス。 

  • 高い信頼性(ファイブナイン): 
  • 99.999%の可用性を実現しており、ミッションクリティカルな業務にも耐えうる設計です。 

  • 垂直統合の強み: 
  • ドライブ、筐体、コントローラーのすべてをSeagateが自社開発しているため、振動対策や冷却効率が極限まで最適化されています。 

 

 

 

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