課題に応じた最適な業務の効率化をDeepLearningBOXⅢが加速させる
Spakona様
コンサル業務とシステム開発を両立し、最適な業務効率化の実現をサポートするSpakona。スピーディーなシステム開発とクオリティアップを「DeepLearningBOXⅢ」が後押しする。
少子高齢化などの影響による「人手不足」を背景に、さまざまな企業がその課題解決に向けた「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に取り組んでいる昨今。「世界を最適に設計する」をミッションに掲げるSpakonaは、AIを含む最先端の技術を駆使し、それぞれの企業が抱える課題に最適なソリューションを提供している。
Spakonaは、東京大学大学院の同期で、ともにAI領域の研究に取り組んできた代表取締役の河﨑太郎氏とCTOの服部篤樹氏の2人が2020年に設立。両氏はもともと、大学院の研究室で飛行機やロケットなどの分野で活用される流体シミュレーションの研究を行っていたという。ただ、AIの注目度が飛躍的に上がった2018年頃、JAXAに勤めていた両氏の先輩から誘われた「AI×流体」をテーマとする共同研究に参加。それが「AIに触れた最初のきっかけでした」と河﨑氏は振り返る。
これに加えて、両氏がさらにAIへの興味を深める要因となったのが、画像に映っている物体をリアルタイムに検出するオープンソースのアルゴリズム「YOLO」との出会いである。河﨑氏いわく、ディープラーニングを活用したYOLOに「高いポテンシャルを感じた」とともにAIの可能性に対しても「好感触を得た」ことから、それを「ビジネスに活かそう」と考えて起業に至ったそうだ。
見積りの概念を変える自動算出アプリを開発
Spakonaでは、まず顧客企業が抱える課題を分析し、その結果から「どのような改善を行なえば業務の効率化を実現できるか?」を提案。さらに、その提案に基づいたソリューションの開発までを手掛けている。課題に対するコンサルティング業務から解決のためのシステム開発までを一気通貫に担うことで「タイムラグなくスピーディーに、かつその企業に最適なソリューションを提供できる」と、自社の強みを河﨑氏は説明する。
また、手掛ける業界や領域も幅広い。例えばこれまでに、鉄道インフラの検知・健全性診断を自動で行う「設備点検AIのシステム」、製造現場における危険エリアへの作業員の侵入を自動検出する「人物検出AIを使った安全確認システム」、紙ドキュメントをcsvなどの構造データへ自動変換する「卸売業向けシステム」、ChatGPTを用いた不動産サイト用の「キャッチコピー作成の自動化システム」などを開発。多彩な業務の効率化やコスト削減などを可能にしてきた。
その中で、大きな成果を挙げた実例の1つに、引越業を展開する「アート引越センター」のアプリ開発がある。この案件では、アート引越センターのDX 推進施策の一環として、AI 技術を取り入れた自動見積りサービス「ぐるっとAI見積りアプリ」の開発を担当。物流業界における「働き方改革」や「労働力不足」といった課題に対して、抽象的に「引越しの見積りを自動化したい」と考えていたアート引越センター側のニーズを見事に具現化したものである。
ぐるっとAI見積りアプリは、引越しを希望する利用者が、引越しの見積りに際して自身の部屋の中を手持ちのスマートフォンでぐるっと撮影するだけで、AIが見積り金額をわずか数分で自動算出。利用者は、好きなタイミングで室内を撮影するだけで簡単に見積り金額を知ることができる。なお、アプリの仕組みとしてはまず、アプリを通じて撮影した画像データを基に3Dモデルを自動生成。そこから物量積算AIエンジンが家財量を認識し、室内にある家財の総量を算出することで見積り金額を算出する。
このアプリは、利用者が24時間いつでも気軽に見積りを知ることができる点が大きなメリットで、河﨑氏によれば「利用者のアンケートでも好評です」とのこと。さらに、アート引越センター側にとっても「見積りに出向く担当者が不要になった」という点がとても重要で、業務効率化の観点からも「見積りの概念をまるっと変えてしまったDXといえる」と胸を張る。
パフォーマンスは8倍アップ!精度やクオリティの向上にも貢献
このように、さまざまな業界での課題解決にひと役買っているSpakonaだが、近年、自社の課題として挙がってきたのが開発機材の「処理速度不足」であった。そもそも、創業当初の2020年から2024年初頭まで、Spakonaがシステム開発に使ってきたのはCPUにインテル Core i7 プロセッサー、GPUにGeForce RTX 3090を搭載したコンシューマ向けのハイエンドPCであった。しかし、画像や3次元データなど取り扱うデータのサイズが増大していくにつれて、徐々に処理時間も増えていく状況に。前出のアート引越センターのアプリ開発においても「1回のAI学習に5日前後かかることもありました」と服部氏は説明し、業務が立て込んでくると「かなり厳しい状況でした」と付け加える。そのような背景から、より迅速かつ効率的に開発を進めていくためには「もっとハイスペックな開発機材が必要だ」と考え、2024年2月にAIワークステーション「DeepLearningBOXⅢ」を導入した。
開発機材の選定において、ポイントとなったのは「現状のニーズ」と「コスト」である。
「前提として、既存のPCより高性能な機材が必要だったのはもちろんですが、一方で顧客企業が求めるレベルなどを踏まえると、GPUサーバーほどのハイスペックな機材は必要ありませんでした。またワークステーションを選ぶとしても、CPUとGPUのスペックバランスが悪いとそこがボトルネックになってしまうため、GPUばかりをハイスペックにするわけにもいきません。そういった点を考慮しつつ他社製品とも比較し、総合的に判断してGPU にNVIDIA RTX 6000Ada×4基を搭載するDeepLearningBOXⅢを選びました」(河﨑氏)
DeepLearningBOXⅢの性能は申し分なく、服部氏は「従来のPCで5日かかったAI学習が、1日とかからず終わるようになりました。8倍近いパフォーマンスが出ていると感じます」と満足げに語る。また河﨑氏は、さまざまな作業を効率化できている点を高く評価する一方で、作業時間の短縮によって「これまで以上にさまざまな試行錯誤にチャレンジできるようになった」という点を強調。わずかなパラメータ調整で性能は大きく変わるケースもあるだけに、試行錯誤の回数を増やせるようになったことで「製品の精度やクオリティをさらにアップできるようになった点は非常に大きい」と補足する。
新しい手法でのさらなる効率化や自社資産の作成にも活用していく
DeepLearningBOXⅢを導入したメリットはそれら以外にもある。例えば、これまでは服部氏のPCで開発したシステムを河﨑氏のPCで起動させた際に、どちらもGeForce RTX 3090を搭載しているにもかかわらず微妙な環境の違いで「河﨑氏のPCでは上手く動作しない」ということが稀に起きていたそうだ。しかし、DeepLearningBOXⅢの導入によってスタッフ全員で共有する共通の開発環境を整備できたことから、PC環境の違いで起きる問題を解決できたことは「とても助かっています」と服部氏はいう。
また、DeepLearningBOXⅢにはLinux(Ubuntu)オペレーティングシステムやAI開発に必要なライブラリー群などがプレインストールされているうえに、最適な動作のためのチューニングも対応済み。面倒な環境設定などの手間をかけることなくすぐに作業できたことも、服部氏は「とても便利でした」と付け加えた。
そのほか、河﨑氏はDeepLearningBOXⅢの導入をサポートした「ジーデップ・アドバンス」(以下、GDEP)の対応にも言及。不具合が発生した際に技術部門所属のスタッフが来訪して対応してくれるなど、迅速かつ丁寧な対応に好感を抱いたそうだ。
今後のビジョンとして、河﨑氏は現状の業務に取り組みつつ、その延長線上にある領域にも目を向ける。例えば最近では、シミュレーション環境でロボットを学習させ、その内容を現実環境にフィードバックする「Sim-to-Real」といった手法があり、その手法を使えばさらなる業務の効率化を実現できると考える。そして、その実現にはGPUが非常に重要な役割を担うことから、DeepLearningBOXⅢへの期待はこれまで以上に大きい。
服部氏は、AIや画像解析などのアルゴリズムが「商業利用可能」なのに対して、そのアルゴリズムを使った学習済みモデルは「商業利用不可」という点に着目。商業利用可能なアルゴリズムを使って自社で学習させれば、そのモデルを自社ビジネスに利用できるようになることから、DeepLearningBOXⅢのリソースをそういったモデル作成のための学習にも活用して「自社の資産をもっと増やしていきたい」と語った。
Spakonaの使用モデル
DeepLearningBOXIII
CPUにインテル Xeon W プロセッサーのW3400シリーズを採用したGPUディープラーニングワークステーション。GPUは「NVIDIA RTX 6000 Ada」×4基を搭載。最大112レーンのPCI Express 5.0によって最大224GT/秒の広帯域でGPU間を接続することで、計算のボトルネックを大きく解消している。