“みんなのAIスパコン”をNVIDIA DGX B200が強力に支援
東京工科大学 様
AIを利活用した幅広い研究に取り組むとともに、学生のAI教育にも力を入れている東京工科大学。12台の「NVIDIA DGX B200」で構築されたAIスーパーコンピューター「青嵐」で、同大学が掲げる「AI大学」構想の実現を目指す。

AIを利活用した幅広い研究に取り組むとともに、学生のAI教育にも力を入れている東京工科大学。12台の「NVIDIA DGX B200」で構築されたAIスーパーコンピューター「青嵐」で、同大学が掲げる「AI大学」構想の実現を目指す。
東京工科大学 デジタルツインセンター長 コンピュータ
サイエンス学部教授 博士(工学)生野壮一郎氏
実践力と柔軟性のある人材を育成する「実学主義」を掲げる東京工科大学は、時代に先駆けたエンジニアの養成に取り組んでいるのが特徴だ。2012年にはいち早くパブリッククラウドを採用した学内ITシステムを構築するなど、さまざまなIT施策にも挑戦してきた。
近年、同大学が特に力を入れているのが「AI教育」である。2019年にはコンピュータサイエンス学部に人工知能専攻を設立。2023年9月には日本のエヌビディア合同会社と学術交流連携を締結し、「NVIDIA 学生アンバサダープログラム」などを通じて、学生自身が生成AIやロボティクス、デジタルツインなどの技術を主体的に習得する土壌を作ってきた。さらにAI技術を教育・研究の中核に据える総合的な取り組みとして「AI大学(AI University)」構想を掲げ、2025年4月に「AIテクノロジーセンター(AITC)」を八王子キャンパスに開設している。
ただし、AI大学の実現に向けては、取り組みを推進するためのプラットフォームが不可欠となる。AITCでICT部門長を務めるコンピュータサイエンス学部の生野壮一郎教授は「プラットフォームがなければ机上の空論に終わってしまう懸念があった」と語る。そこで東京工科大学は、国内の私立大学としては最大となるAIスーパーコンピューター「青嵐」をプラットフォームとして導入し、2025年10月から本格稼働させた。
AIを道具として使いこなし、新しい技術を創出する
「NVIDIA DGX B200」×12台で構成された
AIスーパーコンピューター「青嵐」
青嵐は、NVIDIAの最新AIプラットフォーム「NVIDIA DGX B200」×12台を高速広帯域接続した“GPUクラスター”となる大規模AIシステムである。その性能はすでに折り紙付きだ。導入直後の2025年11月18日に発表された世界スーパーコンピュータランキング「TOP500」では374位、「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」※でも83位にランクインした。現在はその性能を最大限に発揮し、AIだけでなく科学技術計算まで、多彩な研究・開発に利用されている。
東京工科大学としては、青嵐をAI教育に広く利活用していく方針だが、AI教育において1つのポイントになるのが「AI as a TOOL」という考え方だ。つまり「AIはあくまで“道具”であり、その道具(=AI)をきちんと使いこなして“新しい技術”を創出することをAI教育のメインコンセプトにする」と生野教授は説く。コンピュータサイエンス学部で生野教授の研究をサポートする佐々木亮平講師も、「AI教育においてはAIをどう使いこなすかがとても重要だ」と補足する。
青嵐は非常にハイスペックなAIスーパーコンピューターだが、学生を含む大学内の研究者であれば基本的に誰でも利用できる点も見逃せない。現時点では、青嵐の高い処理能力を必要とするレベルの研究に取り組む学生は多くないが、東京工科大学では「学生が小規模なデータセットによるAIプロジェクトに満足していてはイノベーションにつながる学びは得られない」という課題感を重視している。これを踏まえて同大学は、コンピュータサイエンス学部だけでなくメディア学部や工学部、デザイン学部、応用生物学部、医療保健学部まで、文系・理系を問わずすべての学生が最新のAI環境で学べる「みんなのAIスパコン」構想を掲げ、そのためのインフラや仕組みも整備した。
生野教授は、国内のスーパーコンピューターは「共有財産であるべき」と主張する。その考えから、将来的には「青嵐の学外への貸し出しもあり得る」とし、みんなのAIスパコン構想のさらなる広がりもビジョンに据える。
※青嵐はその後も高い性能を維持しており、「TOP500(2026年6月版)」では世界第398位(国内第41位、国内私立大学第1位)、「HPCG(2026年6月版)」では世界第88位に継続ランクインしている。HPCGは、実際の科学技術計算で利用される処理特性に近い条件でスーパーコンピューターの性能を測定するベンチマーク指標。
AI回答のコピペは当然NG。その危険性を学んでほしい
昨今は米国のAnthropic社が開発した次世代AIモデル「Claude Mythos」などを筆頭に、フロンティアAIが人間の思考を凌駕するような時代に突入しつつある。そこで生野教授がAI教育におけるもう1つの重要なキーワードとして提示するのが「AI倫理(AI Ethics)」である。
AI倫理とはAIの開発や活用において、社会や人権などに悪影響を与えないようにするための道徳的・社会的な規範あるいはガイドラインだ。具体的な内容は世界的にいくつか出ている。
- Human in the Loop(HITL):AIの学習や運用などに、人間が意図的に関与するシステムやプロセス
- Decision Maker is Human:最終的な判断を下したり、責任を負ったりするのは人間であるべきだとする考え方
- G20 AI原則:2019年のG20大阪サミットで合意された、国際的なガイドライン
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 講師 博士(工学)佐々木亮平氏
佐々木講師は学生の活用例になぞらえ、「例えばAIが提示した答えをそのままコピー&ペーストすべきではない」といったシンプルな具体例を挙げる。生野教授も「学生はAI回答のコピペをやってしまいがちだが、どれだけ危険なことかもきちんと学んでほしい。そういったAI倫理もカリキュラムに組み込んである」と語った。
AI倫理の理解を後押しするツールとして期待されているのが、AIの判断根拠を人間が理解できるようにする「XAI(説明可能AI)」だ。生野教授は現在、XAIのトップランナーである東京工科大学コンピュータサイエンス学部の中西崇文教授と共同でXAIを研究中。XAIに関する研究は青嵐の主要プロジェクトの1つでもあることから、生野教授はその重要性を改めて強調した。
手厚いサポート体制が、問題解決の強い味方に
今後も幅広い活用が期待される青嵐だが、導入までの道のりは「決して順風満帆ではなかった」と生野教授は振り返る。なかでも導入に際して苦労したのが、Webインタフェースを介して青嵐を利用できるようにする「オープンオンデマンド」の構築と「認証に関するこだわり」の実現だった。
青嵐のようなスーパーコンピューターをネットワーク経由で遠隔利用する場合、一般的にはターミナル環境からSSHでアクセスする運用が広く採用されている。しかし東京工科大学では、情報系・工学系だけでなく、多様な分野の研究・教育で青嵐を活用することを目指していた。そのため生野教授は、利用者がターミナル操作や複雑な設定を意識することなく利用できる環境の実現にこだわり、「スマートフォンの認証アプリを使う感覚で利用できる仕組みを導入したかった」と振り返る。
こうした背景からオープンオンデマンドの構築と認証アプリを用いたログインの仕組みづくりに取り組んだが、実現までの道のりは険しく、さまざまな課題が立ちふさがった。そのような状況で強い味方となったのが、青嵐の導入を手掛けたジーデップ・アドバンスの手厚いサポート体制だった。認証にかかわる問題に関しては、NVIDIAの技術者も一緒になって解決に対応。最終的に約5ヵ月もの時間をかけ、オープンオンデマンドの構築を含む認証基盤を実現した。
手厚いサポート体制は、青嵐の運用においても同様である。運用時のトラブルはいつ起きるかわからないだけに、気軽に相談できるジーデップ・アドバンスはとても心強い存在となっている。生野教授は「ジーデップ・アドバンスとのやり取りはとてもスムーズで、信頼関係もしっかり構築できている」と評価した。
あわせて読みたい|同日取材のもう一つの事例
AIスパコンの運用から学生の学びまで NVIDIA AI EnterpriseとNVIDIA DGX Sparkが支えるAI教育
本記事と同じ東京工科大学への取材から、AIスーパーコンピューター「青嵐」の運用を支える「NVIDIA AI Enterprise」と、学生がAIに触れる“入口”となる小型AIスーパーコンピューター「NVIDIA DGX Spark」に焦点を当てた、もう一つの事例です。生野教授が2022年にテスト導入した小規模GPUクラスターから青嵐に至るまでの経緯や、約30台のNVIDIA DGX Sparkを活用した新たなAI教育の取り組みを詳しく紹介しています。
東京工科大学 様の使用モデル

NVIDIA DGX B200
最新の「NVIDIA Blackwellアーキテクチャ」を採用したGPUを8基搭載する統合型AIプラットフォーム。前世代のシステム「NVIDIA DGX H100」と比較して、3倍のAIトレーニング性能と15倍の推論性能を実現する。大規模言語モデルやレコメンダーシステム、チャットボットなど、多彩なAI開発のインフラとして活用できる。










